4月8日は「花まつり」—お釈迦様の誕生を祝う行事
春の訪れを感じる4月8日は、日本各地の寺院で「花まつり」が行われます。花まつりは、お釈迦様(ゴータマ・シッダールタ)の誕生を祝う仏教行事であり、正式には「灌仏会(かんぶつえ)」と呼ばれます。色とりどりの花で飾られた花御堂(はなみどう)や甘茶を用いた儀式が特徴的なこの行事は、仏教徒にとって大切な意味を持っています。本記事では、花まつりの由来や意味、行事内容について詳しく解説します。
花まつりの由来
お釈迦様は約2500年前、現在のネパールにあたるルンビニー園で誕生しました。伝承によると、お釈迦様は誕生した直後に七歩歩き、右手で天を指し、左手で地を指して「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげ ゆいがどくそん)」と唱えたとされています。
この言葉は「この世に生まれた自分自身はかけがえのない存在である」という意味であり、人間の尊厳や自己の価値を説いたものとされています。
その時、空から九頭の龍が現れて甘露(かんろ)の雨を降らせ、お釈迦様の身体を清めたと言われています。この伝説にちなんで、花まつりでは誕生仏に甘茶をかける「灌仏(かんぶつ)」の儀式が行われます。
花まつりの行事内容
花まつりは全国の寺院で開催され、次のような儀式が行われます。
◇ 誕生仏への灌仏(かんぶつ)
花御堂に誕生仏(生まれたばかりのお釈迦様の像)が安置され、参拝者は柄杓(ひしゃく)を使って誕生仏に甘茶をかけます。
甘茶をかけることで、お釈迦様の誕生を祝うとともに、自身の心の汚れを清めるという意味があります。また、甘茶には「無病息災」「厄除け」の願いが込められています。
◇ 花御堂の飾り付け
花御堂は四方を花で飾った小さな堂で、お釈迦様の誕生の場面を表しています。春に咲く桜やツツジ、ユリ、菊などが飾られ、色鮮やかに彩られます。
花御堂は「お釈迦様の誕生の祝福」と「仏の慈悲」を象徴しており、参拝者はここで手を合わせて祈りを捧げます。
◇ 甘茶の振る舞い
灌仏で使用された甘茶は、参拝者にも振る舞われます。甘茶には「邪気を払う」「健康長寿」の効果があると信じられており、飲むことで無病息災を願います。
また、一部の地域では、甘茶を家の周りに撒くことで「魔除け」や「家内安全」のご利益があるとも言われています。
◇ 稚児行列
地域によっては、子供たちが華やかな衣装を着て「稚児行列(ちごぎょうれつ)」を行います。
稚児行列は「お釈迦様の誕生を祝う天人の姿」を模したもので、参加することで健やかな成長や幸福を祈願します。
花まつりの意味
花まつりは、お釈迦様の誕生を祝うだけでなく、「生命の尊さ」「自他の存在を敬う心」「他者への慈しみ」の大切さを改めて感じる機会でもあります。
「天上天下唯我独尊」の教えは「誰もが尊い存在であり、他者と共に生きている」という仏教の根本的な思想を示しています。この教えは、人と人、また人と動物との共存の精神にも通じます。
そのため、花まつりはペット供養とも深く関係しており、「かけがえのない存在であるペットを大切に供養する」意識にもつながります。
花まつりと現代社会
現代において、花まつりは仏教徒だけでなく、地域の人々にも親しまれる行事となっています。
花まつりの時期には寺院で甘茶が振る舞われたり、花御堂が設置されたりすることで、誰もが気軽にお釈迦様の誕生に触れることができます。
また、稚児行列などに参加することで、子供たちに「命の尊さ」「他者への思いやり」を伝える場ともなっています。
まとめ
花まつりはお釈迦様の誕生を祝うとともに、「命の尊さ」や「慈悲の心」を見つめ直す機会でもあります。
春の訪れとともに、花に囲まれた誕生仏に甘茶をかけ、静かに手を合わせることで、自分自身や周囲の存在への感謝や慈しみの心が芽生えるでしょう。
また、ペットも家族の一員として大切に供養する意識が高まっている現代において、花まつりの教えは「すべての命が尊い」という仏教の教えを改めて認識するきっかけとなるはずです。